ヲタク14年生。

インドカレーとライブ、ときどきイメコン。

『あれよあれよの大騒動』①

 

3月6日。

 

「三角関係って本当に存在するんだなあ…。

ドラマの話だけだと思ってた。

まさかわたしの周りで起こるなんて。」

 

「わたしは当事者ではないから

なんだかんだでわたしが一番平和よね…。」と思いながらも

今日も片桐里菜はため息をつく。

 

 

どうして彼らはこんなことになってしまったのだろう。

当事者だって、そう思っている筈。

事の発端はいつだかわからない。

 

だって、恋は気づいたら始まってるものだ。

 

 

2月14日は、彼らにとって衝撃的な日になったと思う。

 

衝撃的な日の数日前、わたしは職場の同期である泉優子・小林明日香

バレンタインの話をしていた。

「あたしさー、竹井さんに渡したい。」

 

「竹井さんに、か…。」

竹井涼。わたしたちの4個上の先輩。

入社一年目であるわたしたちの仕事がいくら遅くても何も怒らない、天使の心を持った存在。

でも何を考えてるかわからない。

裏の顔とか、やばいんだろうなー。

 

泉は1月の飲み会以降、竹井と毎日連絡しているらしい。

 

「毎日連絡するうちに、涼くんのこと好きになっちゃったんだ。」

泉と小林は、竹井のことを「涼くん」と呼んでいる。

わたしには、真似できない。

 

ところで「毎日連絡するうちに好きになっていく」のが本当なら

わたしにだって、気になる人がいる。

 

大森裕貴。竹井と同い年の人。

職場の人ではなく、一年くらい前に外で知り合った人。

常に大森と一緒にいると楽しくて

時間がすぐ過ぎてしまう。

でも、竹井以上に何考えてるのかわからない。

 

出会った当初から

「大森の説明書があればほしい」と思っていた。

まあ、作れる人なんていないんだろうな。

それくらい謎な人。

 

彼の数々の理解しがたい行動の結果

今じゃ死ぬほど愛してしまっている。

 

「大森にとって、わたしはどんな存在なんだろう。」

それが分かれば苦労しないのに。

 

 

そして迎えたバレンタインデー。

泉は結局竹井に渡したらしい。

小林は「職場の上司に渡した!」とかなり上機嫌だった。

そしてわたしも、大森に渡すか否かを考えていた。

 

仕事終わりに3人で集まって、飲み会を開いた。

泉は職場の上司に協力してもらい、竹井にクッキーを渡したようだった。

でも、竹井にはほかに好きな人がいるらしい。

 

「あたし、諦めないから!」なんて

泉は言ってたけど

そのときは竹井の好きな人が小林だなんて、思いもしなかった。

 

確かに同期3人で並べば

小林が一番モテるタイプである。

可愛い雰囲気だし、確実に男ウケする。

わたしは本当に男にモテなくて、正直羨ましい。

 

今日は竹井と朝から仕事。

 

泉に全てを知られてしまった竹井は

ため息をついている。

一緒にわたしも、ため息をつく。